こんにちは、しーらです。primereadingでヘミングウェイが読めるとの事で「老人と海」を読みました。古典文学ながら、誰もが読める冒険小説です。
目次
老齢とは思えない屈強で変わり者の漁師と懐く少年
漁師サンチャゴは長年にわたり海で生きてきたベテランです。顔こそ老人ですが、その身体は逞しく、老人とは思えないほど屈強です。少年時代から水夫として海に出て以来、様々な経験をしてきました。そのため、老いてなお漁を諦めることはしませんでした。たとえ、数十日釣果がなかったとしてもです。
そんなサンチャゴに懐く少年がいます。サンチャゴが漁を教えたマノーリンという少年です。マノーリンはサンチャゴをいつも気にかけており、両親の漁に付き添う以外ではほとんどサンチャゴと一緒にいます。序盤、サンチャゴとマノーリンはお互いの漁の話と野球の話で歓談していました。このやり取りが個人的には穏やかでささやかな時間を感じさせました。こういった落ち着いた展開というのは流されがちなので丁寧に描写をしてくれているのはとてもうれしいです。こういったバックストーリーがあるからこそ、登場人物に対する感情移入がしやすくなるからです。
サンチャゴは彼方の海で巨大な獲物と出会う
サンチャゴはマノーリンと別れたあと、漁にでます。仕掛けを設置してしばらくした後、サンチャゴはかつてない巨大な獲物、カジキが仕掛けに食らいついたのを感じ取ります。仕掛けを切り離さんと逃げるカジキ。人生においてこれ以上ない獲物の予感を察知したサンチャゴは仕掛けのロープを離すまいと握りしめます。この決死の攻防は数日続くのですが、1行たりとも余裕がなく、緊張感を大いに感じさせるシーンです。自分が読書において、ドキドキと高鳴りを感じたのは久しぶりでした。この本において1番の見所と言っても過言ではありません。
鮫との死闘と骨になったカジキ
満身創痍、資源も使い果たしてカジキを仕留めたサンチャゴ。無情にも、血の匂いに誘われた鮫の群れに追いかけられることになります。最初こそ必死に抵抗するサンチャゴでしたが、港に近づくにつれその身体は言うことを聞かなくなり、命からがら逃げ切るもカジキは骨になるまで鮫に食い尽くされてしまいました。自然の脅威はいつの日も唐突に訪れ、人類に対して抵抗の余地など持たせずその力を振り下ろします。その事実をありありと残酷に描く様はあまりに切なく感じました。
生き延びたサンチャゴはかつての記憶の夢を見る
サンチャゴは自宅へ戻るとすぐに眠りにつきます。ふと目が覚めるとマノーリンが泣きついていました。しばしの歓談の後、サンチャゴは再び眠りへと戻りました。かつて自分が行った外国で見た、ライオンの夢でした。
サンチャゴは今回の漁で何度も少年(マノーリン)がいたらと独り言を呟いていました。幾たびもの釣果を上げてきたサンチャゴが無意識に助けを必要としていたのです。これは、老いには勝てず、しかし友がいれば越えられないものはないという表現だと私は解釈しました。しかし、その時マノーリンはいませんでした。それもまた、自然の摂理による因果なのかもしれません。
まとめ:古典文学を感じさせない程力強く、切ない冒険小説
古典文学とは思えないほどシンプルで力強い文章を感じさせる名作でした。これは翻訳がとても良いこともあるので、小川高義さん訳の物をおススメします。展開や描写も全体的に丁寧で、この小説に対する熱量が凄まじいことを感じさせます。純粋なエンタメとして優秀なので、本に明るくない人でも読みやすくお勧めですよ。
それではまた明日。
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